2013年10月12日土曜日

死者との距離



他にも書いた気がするのですが、

経験主義があかん、という主張がよく分からず、首をひねっていた時がありました。


何でも経験しないと、わからないだろう、やったこともないのに、本だけ読んだり知識だ

け仕入れて分かったようなことをいう人こそ、偽物だろうと思っていたからです。



でも、経験主義、の根本的な落とし穴は、人間が経験できることなんてたかがしれている

にもかかわらず、その限られた経験を一般化して、すべてに当てはめようとすること

だったんだ、ということがやっと最近わかりました。




だから、人生経験が多いからといって、年長者のほうがよく物事をわかっていると

いう訳では全くない。むしろ、抽象的な思考を精緻に積み上げて、つきつめていった

人が、経験にかかわらず、本質に迫っている、ということです。



ただ、今日、同級生が何人もいるなかで、同級生のピアニストの演奏を聴いているうちに

今、ここにいない, 若くして亡くなったり、ここ数年に亡くなったりした仲間のことを

考えていました。そうして、唯一、若者との経験の違いで重要なことは、死者との

距離だなあと、思い至ることになりました。



でも、年を重ねるだけでなく、大きな災害や戦争を経験すると自分に関わりのある

死者は多くなり、そうするとその距離はもっと縮まる。その死者との距離が、その人の

霊的価値のようなものを決定するのではないだろうか、と、内田樹ふうなことを

色々考えます。



さらに言えば、過去の芸術、文学、歴史、哲学、科学、学問に没頭している人は

死者と常に対話しているようなものだから、そういう人たちが益々純化して霊性が

高まり、神々しくみえるのは、そのためかと勝手に合点していました。







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